結果発表
「メガネ」または「見る」をテーマに2023年11月1日から2024年1月31日に実施した短歌コンテスト。合計1966首の作品が寄せられました。ご応募くださった皆さまに心より感謝申し上げます。俵万智さんに選出頂き、入賞した全作品を紹介します。
大賞 一首
老眼鏡かけてサインす
2回目の婚姻届けは冬虹の日に
(菊山千月さん)
人生の再出発に寄り添うメガネとしての老眼鏡です。年齢を重ねることが前向きに伝わってきて励まされました。冬の虹は、美しいけれど、同時にまた儚いもの。おめでたい気分だけではないところに、年齢ならではの深みを感じました。(俵万智さん)
優秀賞 九首
取りに来てくれたらも一度会えるから
メガネ忘れたあなたを追わず
(風花雫さん)
初めての両用メガネ冬の日に
近くて遠い春を見ている
(兵庫県 66歳 男性)
自画像の仕上げにメガネを描き足した
縁起だるまの目入れのように
(田巻由美子さん)
休日は眼鏡をかけているという
君を思いつつ過ごす休日
(葉月ままこさん)
鏡には爺が映り吾を見る
思ってるほど若くはないと
(みんみんさん)
階段でコケて壊した眼鏡さえ
笑い話になる二人旅
(小幡裕美さん)
憶えてます「眼鏡の女性は採らない」と
云った役員の戦ぐ鼻毛を
(夏目陽子さん)
メガネから子の描き初むる吾の顔は
大きく笑う口で仕上がる
(村井敬子さん)
パパの見ている世界ごと味見する
ように赤子はメガネを舐める
(睦月雪花さん)
講評
たくさんのメガネ、そして見ることの短歌を、ありがとうございました。メガネが、その人のアイデンティティになっていること、見ることが生きることと直結していることなどを、改めて感じます。暮らしのあらゆる場面に、チャーミングな小道具として登場するメガネを楽しむことができ、充実した選考の時間でした。(俵万智さん)